同名短編集鍵のかかった部屋の第二話

呼び鈴に伸ばしかけた手が、宙で止まった。

会田愛一郎は、逡巡していた。今さら、どんな顔で、あの子たちに会えばいいのだろう。

五年間という長い不在を、どう言い繕えるというのか。

初めてこの家を訪問したときの記憶は、昨日のことのように鮮明だった。

姉のみどりは、行方不明だった不肖の弟を温かく迎えてくれた。

大樹と美樹は、小学生の低学年だったが、突然現れた胡散臭い叔父に初対面から懐いてくれ、

うるさいくらいにまとわりついてきた。

そのときの驚きと感動は、今も胸の奥にある。

高校生の時に家を飛び出して、ずっと孤独な生活を送ってきた自分が、

束の間、家庭というものの温もりを味わわせてもらったのだ。