超・殺人事件の一話目

 
「あっ、あなた……」

「どうしたんだ」

「こ、これ、これこれ」そういって彼女は右手に持っていた紙を俺に見せた。

それは浜崎会計事務所から来た書類だった。所長の浜崎五郎は、俺の高校時代からの友人だ。

俺は小説家になって十年だが、今年はこれまでになく収入が多かったので、来春の確定申告に備えて

先日浜崎のところへ相談にいったのだ。今までは、確定申告は自分で適当に済ませていた。

済ませられるほど、収入が少なかったということだ。

書類には、来年の春に俺が支払わなければならない税金の額を、概算して記してあった。

その数字を、俺は最初ぼんやりと眺めた。

それから次にじっくりと見つめ、最後には0の数を数えた。

「ははは」俺は笑いだした。「はははは、はははは。こんな馬鹿な。ははは、はは」