「女たちは二度遊ぶ」の中の1篇です。

”とにかく、よく泣く女だった。”
冒頭はこう始まります。


???


泣かない女じゃなかったっけ?

テレビで残留孤児のドキュメントを観ては泣き
百万部売れた絵本を読んでは泣き
果ては、自分が買っておいたショートケーキを、ぼくが無断で食べたと言っては泣いた。
「だって、一緒に食べようと思って買ってきたんじゃない。・・・」と、悔しそうに目に涙を溜めていた。


そのころ、学生時代の友人と池袋の居酒屋で遅くまで飲んだ。

友人がとつぜん、「なぁ、もしもさ、おまえの彼女が妊娠したら、おまえどうする?」と訊いてきた。

「言い出しづらいから」

「から?」

「おまえに頼む」

「頼むって何を?」

「だから、俺の代わりに、やっぱり堕ろしたほうがいいんじゃないかって、」

素直な答えだったがのだが、友人の術中にはまったことに気がついた。

「卑怯だねぇ、おまえも」と友人は笑って、その妊娠した彼女の電話番号のメモをぼくは手に握らされていた。


翌日、ぼくは友人の彼女に電話をかけた。
伝えるべきことを、かなり遠まわしに伝えると、

「卑怯なことするんだね。男の人って」

彼女は心底呆れたようだった。


妊娠は昔から、男女のトラブルの原因になっています。

「産みたいんだけど?」と女性が言い。
「おろした方がいいんじゃない」と男性が答える。

人類は何万年と、こういうやりとりを繰り返してきたのでしょう。

この吉田修一という作家は、人間のだめな部分を特徴として書き表します。

この話では、男が直接、話をしづらいので、友人である主人公に話してもらいます。

僕の周りでは、そういう話は聞いたことないですが、世の中には多いのかもしれませんねぇ。