短編小説読んでみた

福岡の便利屋

2013年09月

「兄ちゃん、ちょっといい」

「今、下でビデオ見てたんだけどさ、ちょっと変なのが映ってるんだ」

オリジナルテープの本編が終了すると

画面中央には銀行の中央玄関。

そこから女性が出てきて自転車で走り去る姿。

それを追いかける原付自転車の音。


そこに映し出されていたのは、去年の暮れから起こっていた

とある事件のあらましだった。


なぜ、レンタルビデオにこんな映像が映っているのか。

その事件の全貌は何なのか。

海馬弘樹の捜索はそうして始まるのであった。

毒ガス、それは十九世紀の終わり頃からすでに世界中の人々から増悪されていた。

一九二五には、ジュネーブ議定書で戦争における使用が禁止され

毒ガスの使用は国際条約違反との認識が広く行き渡っていた。


しかし日本は、大陸における中国との戦闘でガスをたびたび使っていた。

これには様々な議論が付きまとうが、少なくとも

「イペリット」「ルイサイト」「ホスゲン」

などといった化学兵器を製造し

それを詰め込んだ砲弾や爆弾を日本が持っていたのは確かだし

それが前線に配備されていたのも事実だ。


しかし、それがオーストリア軍に対して使われていた?

そんな事実があったのか、なかったのか

歴史認識、戦争の悲惨さを訴えた異色のミステリー。

主人公は生稲昇太、交通課の刑事である。

その日は先輩刑事の見目の警部補試験の合格発表だった。

警部補試験は、数々ある試験の中でも最も競争率が高い。

県下でも6百人以上の受験者があり

予備試験、一次試験、最後に刑事、設備、交通など

部署別に分かれた面接試験があり

それらをすべて突破して最終的に合格できるのは

全体の一割にも満たない五十人ほどでしかなかった。


その発表の日に、突発的な出来事がおこる。

北村健治はサンフォード・H・亀井というハワイ生まれの二世に頼みごとをされる。

「あのフィルムのコピーを、俺に手渡してくれ」

「あの件に関するサニーの任務は、まだ終わってないのか」

サンフォードはそのフィルムをコレクションに加えたいと言った。

彼のコレクションとは、大統領の暗殺現場でたまたま撮影されたホームビデオ

TV局の報道員たちが撮影した16ミリフィルム

さらにはナチュラルな写真など・・・。


問題のフィルムとは、当時二十三歳だった愛田美知子という日本人の女性が撮影したものだった。

「あなたの声、本当に透き通っていて、まるで氷みたいだわ」

主人公はそんな声の持主だが、その声には特別な力があった。


最初に使ったのは、小学一年生。

授業でアサガオを育てていて、校舎脇のコンクリートにみんなの植木鉢がならんでいた。

しかし、自分の育てたアサガオはクラスでもっとも良いものではなかった。

クラスでもっとも美しいアサガオを育てていたのはユウイチ。

何かあると、先生はそのアサガオを褒める。

そんな時、主人公は体の中に住んでいる薄汚い動物が、皮膚を突き破って

叫びだしそうな気分になるのである。

・・・・

デスノートを思わせるかのような作品である。

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